うぶすな

天地の初めて発けし時とても
いまだしく地も国稚く浮べる脂の如くして
くらげ成しては漂ひし時とて
天つ神在りて別天つ神、独神、五柱神、隠れたり
次ぎて成りしは後に称ふ神代七代や
伊邪那岐と伊邪那美在りて国生めば
大倭豊秋津島さへもつかねて大八島国も六島現はれたり
さても神をもまた生めば
子は孫を生み
孫はなほ子を成し継ぎて
数ふるに八百万神この国に集ひ/\て千代八千代
このかみとても神御座すあなうまし国あきづしま
山には山の神在れば
海にも、田にも、月に、日に、星にも、火にも、風に雨、水に雷
みなゝべて在るべきものゝ宿しつるおほいなる意志
悠かなるあがりたるよゆ継がれゐる
生き命とふまたとなき尊きものこそ嬉しけれ
いま在るものを在り給ふものを崇めつをしみつゝ
されどこの身が踏みゐたる
なほ拓けゐる玉鉾の鄙の長路ありきゆかむ
人はいづくゆ越したりや
人はいづくへ往くべしや
たれもたれとて知り得ざる理ほらば
息の緒を玉の緒結び魂を振りたゞ有り渡るそのかぎり
辿りい辿る血脈のもとは綿津見この星斗
あそもあれをも、たれもかも
弥遠き日はなべて泡
水泡、泡沫
在り経とは海のそこひゆ浮き初めつ
水面し懸くるものならむ
かひろぎ、とをらひ、つむつむと
ゆたにたゆたに、あゆきつゝせゞにおぼゝれなづさひて
ひたおもむきに、ひとすぢに、いづれ弾けつ果てば果てよ
在りとふいまを抱きては
繋ぎゐる手を離さずにほとほり孕みたゞねびゆかむ

幾辻も経ては辿りぬこに在りてこには在らざる産土 とこしへ

あものごとよろづ言の葉つかねたる地よ 息の緒のかぎりに思はむ




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