循環/今様歌 |
張り詰めてゐた空ゆるみ 風が生まれてまたゆるむ ゆるみとゆるみの間隔も ゆるみ始めて時を呼ぶ 是と非の間に何がある? 是ではなくても非でもない 非でもないけど是ではない 非と是の間に距離がある 同じぢやないとふギザギザは 鋭いけれどやはらかい 違ふつていふフカフカは ひやつとするけど、あつたかい 海に降るなら雨がいゝ 還れたねつて言へるから 砂に降るなら雪がいゝ 還れるねつて言へるから 麦が稔つてゆくやうに この手に稔る種がある 麦がそよいでゐるやうに 風に吹かれる朝がある 3分先つて何ですか? ぼくは今だけ持つてゐた 3分前つていつですか? 過去が離せぬぼくでした まるとまるとを重ねれば レンズのやうに歪んぢやう まるとまるとの真ん中は ダンスのやうながらんだう 胸の振り子が右へゆく 胸の振り子は左へも 揺れてゐるけど動かない 動かぬ支点は動かない 拡散といふベクトルと 集結といふベクトルと それでも行きたい知らない地 それでも待ちたい知らない日 雲形定規をなぞつても 終はりは来てはくれません 三角定規をなぞるから 終はらせられる傷みです 達成といふ喪失は 喪失といふリセットで 喪失といふ原点は 原点といふスタートで 線と線とは交はらず どこまでいつても線と線 線と線とが引つ張り合ふ 真ん中といふ線も線 「ない」つて言へる無自覚を 自覚してゐる自嘲です 「ある」つて言へる自覚すら 無自覚でゐる自虐です 安心だけを欲しがつて 安心ばかり探してた 安心だけぢやない熱に 安心できる日が欲しい 唯物論が唯一と 敷かれたレールを知らずゆく 敷かないレールをゆかず知る 唯心論は唯識と 言葉にすれば嘘になる? 言葉にすれば枷になる 枷になるから嘘になる? 嘘にするから枷になる 始発電車を壊したい ピストルが鳴るまでのこと 快速列車を飛ばしたい ピストル鳴つた時からは はつかねずみが輪を走る 終点なんて見ないまゝ 出発点も知らぬまゝ ほもさぴえんすは線をゆく 弁へるべきものとして わたしはわたしの影を踏む 知らねばならないものとして わたしはわたしと背比べ 選ばせられるといふ不遇 選んでゐるのに選べない 選んでゐるといふ不屈 選ばらぬことを選びます |
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