発生-ontogenesis-/片歌連歌(独詠)

空白をいまだ恐るゝをさなきこゝろ
触れらるゝ、肌をくまなく 悠けき安堵

かぜは孤悲、みづは故里 素肌のみ知る
冷たさは拒絶にあらず 溶け合ふ為に

わたくしが温めつされど冷やさるゝ 空
脊髄が負ふ十字架をなぞらまほしく

地の底に横たはるもの 焔・架け橋
皮膚もまた地であるゆゑに水脈を抱く

同胞はなほもくまなく脈打つまゝに
わたくしのこちらとそちら 満たしゆくもの

交はす熱 交はす涼にて来る満潮
個ではなくいち部になりぬ みづといふ世と

発生は系統として 個体ともして
世は世にてなれどちひさき世にて成りうる

沖へゆく もはや成魚でありゐるならば
遠浅の海ゆ望むは空とのきはめ

なにゆゑに世は相対の夢を望むか
とこしへに手繰れぬものゝ名は地層とふ

宛がはれたる名前など水泡のごとく
白骨が軋む 風とふ波に泳げば





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