ちのすゑ

背面ならよしもいづくにゐたれどもこゆ背面なむ
影面ならよしもいづくにゐたれどもこゆ影面ゆゑ
日の緯はこゆ日の緯や
吾妻とてこゆ吾妻なむ
時となし背面の夏は夏なれど
影面の冬ゆ寒きとも
影面の冬は冬なるも
背面の夏ゆ暑けしと
日の緯がなほ日の緯が、日の緯それは吾妻ゆゑ
吾妻がさきの吾妻なほ、さきの吾妻は日の緯や
よろづのものはさにあれど、かつさにあらず
増さるなら増さればすでにさにあらず
時なく望み勤しむはかなふとふこと
かなはまくほしく思へど
人なべてかたみに違ふものゆゑに
はなはだかつもいさゝけく違ふもなべて人なれば
あなたふとしや、たふとしや
たれも等しき世にあらば有経は易きことなるも
けだしたのしくあらざらむ
違はゞ違ふものをこそ賜り能へ、能ふらむ
違はざるなら等しくばたふとぶことも能はじて
あなづることはあらずとも
たふとぶこともあらざらむ
あなづる、たふとぶいづれをや選るは思ひの下、面
うたがたも根は等しくに
たゞにまへにとあゆめども
まへいさゝかも逼まらじて
あがめに見ゆる地のすゑは
なほあらたしく、あらたしく変はりゆくゆゑ
背面には背面がまゝに直くあり
かつ影面にはそれゆゑに直くもあれば
在るものを在りとふことを容れらるゝ
広きこゝろよあが身にそ
生れよ、根足れよあゆかずに
世はたゞ広くまろきこの星

まさる、まく まさらばよしや、そはあらざらむ
みづからにはぢなきやうに勤しむかぎり





<<   >>