ふること

日本古来の和歌韻律には五音・七音の組み合わせによる複数の歌体が存在していました。

● 短歌/五七五七七からなる五句・三十一文字
  現代短歌も含めて、最も多く詠まれてきた歌体です。

● 長歌/五七×三〜+七、反歌を伴う
  文字数制限のない歌体です。
  万葉期に隆盛しましたが、以降は衰退してしまいました。
  長歌には、反歌を詠み添えることがお作法で、
  反歌は短歌を一、二首、というのが通常です。
  けれども万葉集には短歌三首、という例や
  旋頭歌を反歌にしている例も見られます。

● 片歌/五七七からなる三句・十九文字
  本来すべての和歌、つまりは大和歌は実際に節をつけて謡い
  他者と掛け合うものでした。
  片歌は、その要素が最も強い歌体です。
  厳密には、片歌は一首だけで成立するものとは言えず、
  片歌をもう一首添えることで完成体(旋頭歌)となります。
  万葉集にはすでに採られておらず、古事記や日本書紀などの
  古代歌謡にのみ見られます。

● 旋頭歌/五七七五七七からなる六句・三十八文字
  片歌の掛け合いから生まれた歌体です。
  元々は掛け合わされた片歌と片歌を併せて一つ、
  と見ていたようですが、後に個人詠でも詠まれました。
  個人詠の旋頭歌はまさしく自己問答する歌体です。
  万葉集にはそれなりの数が採られていますが、
  古今和歌集以降は衰退しました。

● 仏足石歌/五七五七七七からなる六句・三十八文字 
  短歌を詠んでさらにもう一句、詠み添えた歌体です。
  古代、実際に謡われていた短歌の結句をリフレインさせて
  五句目と六句目が対句となることが多いです。
  記述に残された歌数がとても少なく、万葉期に衰退しました。

● 今様歌/七五七五七五七五からなる八句・四十八文字
  平安期から流行し出した歌謡の形式です。
  変形も多く、七四×四の八句・四十四文字や
  八五×四の八句・五十二文字などもあります。
  現代の流行歌にも今様歌の片鱗はたくさん見られます。



あれはあれのまに/\あらむ あれなほあれに
ありゐるを祝かむ、祝ゆるとふこと祝かむ  遼川るか