たった4時間の万葉巡りに過ぎませんでしたが、小さな小さな旅の無事を、私も峠の神様にお礼しましょう。

 瑞籬の 神の御坂を
 畏めば ふさ賜りし
 ものありて なにしかとほく
 ゆかなくば 沁むりゐしかや
 いぶせしと なにしかゝたく
 思ひしか 歌は歌ゆゑ
 いにしへに ならへばこそに
 生り出づる まに/\成さめ
 とふものを たれもたれとて
 空蝉の 人の息の緒
 露のごと 日にそ光りて
 寒ければ なほしみゆきて
 かつもあゆ あゆれどまたも
 天伝ひ 天つ御空ゆ
 天つみづ とていかへりて
 来ゆるゆゑ あに嘆けやも
 いざゆかむ 箱根、鎌倉
 走水 武蔵のきはみ
 多摩川に 晒す手作り
 あれの歌 下総にゆき
 鳰鳥の 葛飾の浦
 真間の浦 手児奈はかなし
 霰降り 鹿島に香取
 神の宮 手向けまくほし
 さ衣の 小筑波嶺ろの
 山の崎 振り放け見ては
 歌垣の ごと謌まむ
 謌むは 天児屋命へと
 ゆきてゆきゆく
 吾妻とふ 国もとほりて
 そのつひの 地はうたがたも
 うち寄する 駿河にゆかむ
 あがあもの 生り出でし国
 かつもあが 背子の霊ゐる
 天つ原不尽

 うぶすなはさねさしさがむ、またもあづまや
 そのまたも大倭豊秋津島ゆゑ         遼川るか
 (於:小田原IC付近)


 足柄へ行く2日前だったか、知人がこう言いました。
「地を這うように生きているのね」
 と。20代半ばに世界中を歩き回り、こんどは万葉関連で日本各地を歩きたくて、というようなことを話した処、返って来た感想でした。
 足柄へ行った前日には別の知人がその日、地元を散策して句碑や歌碑を見てきたことを話してくれました。

 何故、各地を歩くのか。何故、歌を詠むのか。その答えはつねにたった1つしかありません。そうしたいから、と。ただそうしたいから、そうせずにはいられないほど焦がれているから。
 ...たったそれだけです。

                    

        〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜


 本稿を書くにあたり、参考にさせて戴いた文献を以下に記します。

・万葉集関連
 「万葉集検索データベース・ソフト」 (山口大学)
 「萬葉集」(1)〜(4) 高木市之助ほか 校注 (岩波日本古典文学大系)
 「新編国歌大観準拠 万葉集」上・下 伊藤博 校注 (角川文庫)
 「新訓 万葉集」上・下 佐々木信綱 編 (岩波書店)
 「万葉集」上・中・下 桜井満 訳注 (旺文社文庫)
 「万葉集ハンドブック」 多田一臣 編 (三省堂)
 「万葉ことば辞典」 青木生子 橋本達雄 監修 (大和書房)
 「万葉集地名歌総覧」 樋口和也 (近代文芸社)
 「万葉集辞典」 中西進 著 (講談社)
 「初期万葉歌の史的背景」 菅野雅雄 著 (和泉書院)
 「古代和歌と祝祭」 森朝男 著 (有精堂出版)
 「万葉集の民俗学」 桜井満 監修 (桜楓社)
 「万葉の贈る花・伝える歌の本 草花編」 中根三枝子 著 (白墨社)
 「万葉の贈る花・伝える歌の本 木の花編」 中根三枝子著 (白墨社)
 「万葉の花鳥風月」 大貫茂 (保育社)
 「和歌植物表現辞典」 平田喜信 身崎壽 著 (東京堂出版)
 「別冊 太陽 114号 犬養孝と万葉を歩く」 全国万葉協会 編 (平凡社)

・日本書紀
 「日本書紀」上・下 坂本太郎ほか 校注(岩波日本古典文学大系)
 「日本書紀」上・下 宇治谷孟 校註 (講談社学術文庫)

・続日本紀
 「続日本紀 蓬左文庫本」(1)〜(5) (八木書店)
 「続日本紀」青木和夫ほか 校注 (岩波新日本古典文学体系)
 「続日本紀」 上・下 宇治谷孟 校註 (講談社学術文庫)

・風土記
 「風土記」 秋本吉郎 校注 (岩波日本古典文学大系)

・常陸風土記
 「常陸国風土記」 秋元吉徳 校注 (講談社学術文庫)

・軍防令
 「新訂官職要解」 和田英松 著 所功 校訂(講談社学術文庫)

・古事記
 「古事記/上代歌謡」 (小学館日本古典文学全集)
 「新訂 古事記」 武田祐吉 訳注 (角川文庫)

・古代歌謡
 「記紀歌謡集」 武田祐吉 校註 (岩波文庫)

・21代集
 「二十一代集〔正保版本〕CD-ROM」 (岩波書店 国文学研究資料館データベース)

・古今和歌集
 「古今和歌集」 小沢正夫 校注・訳 (小学館日本古典文学全集)
 「古今和歌集」 小島憲之ほか 校注 (岩波新日本古典文学大系)

・新古今和歌集
 「新古今和歌集」 小島吉雄 校註 (朝日新聞社 日本古典全書)
 「新古今和歌集」 久松潜一ほか 校注 (岩波日本古典文学大系)

・拾遺和歌集
 「拾遺和歌集」 小町谷照彦 校注 (岩波新日本古典文学大系)

・千載和歌集
 「千載和歌集」 片野達郎ほか 校注 (岩波新日本古典文学大系)

・新続古今和歌集
 「新続古今和歌集」 村尾誠一 (明治書院 和歌文学大系)

・後拾遺和歌集
 「後拾遺和歌集」 久保田淳ほか 校注 (岩波新日本古典文学大系)

・更級日記
 「和泉式部日記/紫式部日記/更科日記/讃岐典侍日記」
                   犬養廉ほか 校註 (小学館日本古典文学全集)

・連歌集
 「連歌集」 島津忠夫 校注(新潮日本古典集成)

・金槐和歌集
 「金槐和歌集」 樋口芳麻呂 校注(新潮日本古典集成)

・山家和歌集
 「山家集」 後藤重郎 校注(新潮日本古典集成)

・梁塵秘抄
 「梁塵秘抄」 榎克朗 校注(新潮日本古典集成)
 「梁塵秘抄」 佐佐木信綱 校訂(岩波文庫)

・十六夜日記
 「十六夜日記」 玉井幸助 校訂(岩波文庫)

        〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜

 2004,05,21     足柄訪問
 2004,05,26・27   執筆
 2004,05,28     @nifty 文学フォーラム 7番会議室上にて掲載

                                   遼川るか  拝







BEFORE   BACK